ダメな子なんていない

ダメな子なんていない

30年この仕事をやっていて、気づいたことの一つに、子どもは「ダメな子どもなんていない」ということがあります。

これは子どもたちに教えてもらったこと。

 アトリエに長年通ってくれている子どもたちを見ていて、思うことは「成長しない子はいない」なんですよね。人は、元々「成長したい」と生きていると聞きますが、子どもたちは成長する時間の遅い早いの個人差というのはありますが、それでもはびっくりするぐらいに日々成長していきます。

 ダメにしてしまう環境というのもこれだけ多くの子どもたちと接しているのでパターンというのも見えています。そしてダメにしてしまう環境があると言うことは、よくする環境というのも、あるのです。

「ダメにしてしまう環境があるだけ」

子どもの成長というのは良く植物の成長に例えられるのですが、元々は皆がちゃんと花を咲かせることができる種なんですよね。その種を花咲かせるようにまで育てるために、大事なことは芽が出して ちゃんと花が咲く環境を整えてあげることですよね。まずは種はまかなければ種のままですし、水を与えなかれば芽吹きません。種を蒔くことが自立心であれば 水は言葉のようだと思っています。

 そう考えるととても簡単で、つまり、水である、声かけも、多すぎても少なすぎてもダメにしてしまうということですよね。

「温室育ち」とはよく言いますが、手をかけすぎれば いつまでたっても 常に管理しなければ生きていけない様になるのですね。子どもも同じなんですね。

「よく育つ環境」

 アトリエの卒業生たちは、社会人になる頃に、自分の道を迷わず進んでいく子どもたちが大勢います。紆余曲折は誰にでもありますがとにかく自分の意見を持ち、自信を持って突き進む力を持つ子どもたちが大勢巣立っています。そんなお子さんをお持ちの保護者の方にどうしたら立派な子育てができるのか?と聞くと大抵の保護者の方は「私は何にもしていない」と答えます。

そして、「周りの方に育ててもらった」と答える方がとても多いことに気づきます。

 何もしていないというのは決して放任主義というわけではなく、親もいろんな人と関わる場所をきちんと作り、そして、その場所を大切にして、信用している。ということがとても大事なんだなと感じています。

人というのは 一人で育つものではなくたくさんの人と関わりながら育つものです。小さい頃から「さまざまな人と交わる場を作るということが親の大切な仕事」と知っている。これだけで、ずいぶんと子育てが変わってくるのではないでしょうか。私は本気でそう思っています。

 とはいえ、、私もとにかく若い頃は人間関係を作ることが苦手で、なんせ、、大勢の人と関わるのが嫌で一人でできる仕事として この仕事を選びずっと長い時間ひとりで教室を運営していました。就職をしたこともなく、修行時代以外は上司も同僚もいない仕事をずっとしてきたのです。子どもが小学生の低学年の頃まではとにかく人と付き合わないようにしてきたのですが、PTAや子ども会、町内会などの仕事をするうちにいつの間にか苦手だったはずの人間関係が、楽しくなっていったのでした。その話はまた次回に、、、

「子育ては一人ではできない」

 親が子育てを頑張るのはもちろんではありますが、「親だけでは子どもは育たない」と知っていること、これがとても大事なことです。子育ては一人ではできないとわかっていれば、親だけが頑張って疲れてしまうこともありません。子育ての場所を地域で探すということはとても大事なことだと思います。昔は地域のまつりの場などがそれをになっていたのかもしれませんが、人間関係が希薄になってしまった今は、なかなか難しいのかもしれません。もちろん煩わしいことの方が多いということも廃れてしまった理由なのかもしれませんが、「煩わしいことが実はとても大事」なんだと知っているということで気持ちを楽にしてもらえたらなあと思います。子育てを振り返って思うことですけど、人間関係というのは長く続けていることで見えてくることがたくさんあり、そして長年の付き合いというのは大切に育てていかないと続けることができない。でもそれが何より大切なことだったと気づくのです。小さい頃から自分の子どものことをよく知っている大人がたくさんいること。これこそ、親が子どもに残してあげれる最大なプレゼントかもしれない。そう思っています。

 できれば、子育てサークルや子育てネットワークを活用して、一人で子育てをしないようにすると良いと思います。親が人間関係に疲れてしまうことも多々ありますが、あまり深刻になりすぎず居心地の良い場所を探すということも大切な学びでありますね。人間というのは、よくも悪くも一人では生きていけない生き物であると言うことは親になったからできる学びなのだと思います。

 アトリエの合言葉に「家でもない 学校でもない 第三の居場所」と言うのがあります。アトリエは、お稽古事の場所ではありますが、子どもたちは卒業した後もふらりと立ち寄ってくれたり、色々と報告に来てくれたりします。子どもたちにとっては何年経っても 帰ってくる場所になりたいと思っています。

 お稽古ごとも一つは長く続けられる場所を探すと言うのだけでも 子どもの心の拠り所になると思います。ぜひそんなお稽古事を見つけてあげてほしいと思います。信用できるいろんな大人に育ててもらうこと。これだけで子育ては大丈夫。そう思います!