アトリエの中で 子どもたちによく声かけする言葉があります。その一つに
「人のことは気にしない」があります。
30年 この仕事をしてきて思うことは、最近子どもたちが、とにかく 絵を描いたりする時に「上手にできない」と気にします。やる前から「できない」と言うことも多いです。
4歳5歳でも!です。私がこの仕事を始めたころは、小学生になると 人の目を気にする子どもたちも多くなりますが、4歳5歳で、人の目を気にして絵を描けない子はとても少なかったです。むしろ、紙の上だけに描いてもらうことが難しかったほど。落書きがあちこちで自由にできた頃と言うのは、絵はもっと子どもの身近にあったのかもしれません。最近では、アトリエにきて始めて絵を描くという子も少なくありません。こんなところにも環境の問題と子どもの性格との関係は現れてきているのかもしれないなと感じています。
アトリエでまず身についてもらうことは絵を上手く描くことではなくとにかく「人のことは気にしない」で自由に描く「心」をもつこと。
技術を手に入れる前にまず、この自由に描く「心」を持つことがとても大切なのです。
「〇〇ちゃんが、先生の言ったことと違うことしている」
「〇〇くんの方が上手」
「もう僕は こんなにできた 〇〇くんは、まだ これだけしかできてない」
プログラム中にこんな言葉を言う子には、すぐに「人のことは気にしない」と講師から声がかかります。誰かと比較して一喜一憂しているようでは 自由な表現はなかなかできません。
まずは、自分が自分に「表現する自由」を許すこと。これを身につけることが、絵を描くものを作るそして、生きる力を育てる基本だと思っています。
「人のことは気にしない」
上手になりたいと言う気持ちは 確かに誰でもあるものですがそれは自分の中での成長であるべきです。他人との比較の中に、見つけ出すものではありません。ここをしっかりと身につけることで子どもたちは本当に自分と向き合うようになり、自信を持てるようになり、そこから自分らしい成長を始めていきます。
幼少期にこの「自分と人を比較しない」と言う感覚を身につけた子どもはとても強いのです。そして教室の中で、この「誰とも比較しない」という雰囲気が作り出されたクラスは、とても居心地の良い空間になっていきます。講師はこれを作り出すこと 安心できる環境を作り出すこと。これを大切にしています。
まずは 大人が子どもを比較しないこの環境作りが、教育の現場ではとても大切な気がしています。
そして、やはり 身につけることには 時間がかかるものなのです。丁寧に、声をかけ手をかけて、「存在することの安心感」は生まれ、育まれていくものだと感じています。そんなことも 「ソダテルLABO」では大切にしたいと思っています。