著名人からのメッセージ

メッセージ

矢野 誠

僕は音楽で、表現をする人間だから、言葉では音楽を綴ることはしない。したくはない。だからこれは 僕が話をしたことを喜一くんに書いてもらおうと思う。

たいてい大切なことや本当のことは目に見えたり、聞こえたりはしない。だからこそ人間は、太古の昔からどうにかして、この世界を見えるようにしようとしたり、音に聴こえるようにしたり、形にするように努力してきた。それが美術や、音楽、舞踏、などの始まりだった。ところが、現代の芸術、美術や音楽ときたら、すっかり その根源にある生命の不思議さや、世界の美しさを知ろうともせず、触れることもなく、探求する心も忘れて、すでに古典となっている様式や、歴史の中に埋もれてしまいそうな技法ばかりを模倣し、それに即して一寸も間違わずに、トレースすることに熱中し、それが本物だ一流だと、勘違いをしている。そして、これに気づいている人はさらに少ない。芸術はもっともっと生命と共にあるはずで情熱的なのである。それがリズムなんだ。今でも僕は「音の根源」に「命の根源」に触れてみたいと思い、音楽を続けている。こどもたちの未来のため「ソダテルLABO」をやると喜一くんから聞いて僕は、どうせやるなら「創造の根源の喜び」をこどもたちに伝えるそんな場にしてほしいと思っている。芸術のニセモノや、真似事なんてやっても意味はない。今の日本の芸術を育てる土壌は死滅している。それでも僕はこどもたちに諦めないで本物に触れてほしい。そしてその原動力になってほしいと思っている。そのためなら僕はこどもたちと一緒に新しいことをやりたいと思っている。